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朝の小学生の居場所づくりって?Part1 ~事業内容・現状の課題編~

まなぶ

こんにちは。産業能率大学橋本ゼミ13期の八木優花です。

突然ですが、皆さんは朝の小学生の居場所について考えたことはありますか?

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

朝の小学生の居場所?

朝は普通に家で過ごして、学校に行くんじゃないの?

八木
八木

そうだね、私も小学生の時は家で家族と過ごして学校に行っていたよ! だけど、「朝、家で一人で過ごさなければならない」小学生が一定数存在しているんだ。

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

どういうこと??

八木
八木

簡単に言えば、働いているお家の方も多く、子どもを学校へ送り出す前に家を出なければいけない方が一定数いる、ということなんだ。

今は、保護者が共働きをしているご家庭も多いよね。家から職場が遠いと、その分早く家を出なければいけない。そうなった時に、こどもを家に残して職場に向かわなくちゃいけないんだ。

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

小学生の子どもを一人で家に残したまま出勤するのは、安全面や子どもの精神面どちらの側面から考えても不安だね…

実際に、こどもを一人にしてしまう時間がある保護者の方が一定数いることは、こども家庭庁が公開している「こども家庭庁 令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業 小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する調査研究報告書~朝の居場所に係るデータ抜粋~」という調査結果から明らかになっています。

表1は、保護者に対して行った、学校がある日の朝の主な居場所に関するアンケート結果となります。学校がある日の朝の主な居場所について、「自宅(こどもが一人で過ごす時間があり、不安がある)」と回答した保護者が28.3%という結果になっています。

        表1 学校がある日のこどもの朝の主な居場所

(「こども家庭庁 令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業         小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する調査研究報告書     ~朝の居場所に係るデータ抜粋~」より筆者作成)

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

本当だ。約30%の保護者の方が、こどもが一人で過ごす時間があることに対して不安に思っているんだね。

八木
八木

こういった課題を解決するために、国として推進しているものが「朝の小学生の居場所づくり」なんだ!

「朝の小学生の居場所づくり」(こども家庭庁による呼び方に準拠しています)とは、小学校の門が開く前の、朝早い時間帯のこどもの居場所をつくる事業のことを指しています。

私自身、放課後の小学生の生活・遊びを支える放課後キッズクラブでアルバイトをしているため、放課後の小学生の居場所だけでなく、朝の小学生の居場所について興味をもつようになりました。

この記事では「朝の小学生の居場所づくり」の事業内容と、当事業の現状の課題点について掘り下げていきます。

朝の小学生の居場所づくり」の事業内容

当事業は、神奈川県大磯町では「朝の子どもの居場所づくり事業」、愛知県大府市では「小学生の早朝の居場所づくり」のように呼ばれており、地域によって呼称は様々です。

この事業では、登校前のこどもたちを、スタッフやボランティアの方々が見守ります。

加えて、当事業に使用される施設(事業の実施場所)も地域によって様々です。

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

なるほど、スタッフの方やボランティアの方がしっかりと見守ってくれているんだ。保護者の方にとっても、すごく安心だね。

八木
八木

そうだね!だけど、この事業を実際に行っている市町村・運営主体はかなり少ないという現状もある。

実は、この事業には多くの課題点が存在しているのです。

「朝の小学生の居場所づくり」現状の課題

ここからは「朝の小学生の居場所づくり」の現状の課題に触れていきます。

表2は、市町村に対して平日の朝のこどもの居場所確保に向けた施策の有無を聞いたアンケート結果となります。平日の朝のこどもの居場所確保に向けた施策を実施している市町村は、たった1.4%しかないという現状があるのです。

表2 市町村における平日の朝のこどもの居場所確保に向けた施策の実施/未実施

「こども家庭庁 令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業         小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する調査研究報告書     ~朝の居場所に係るデータ抜粋~」より筆者作成)

そして、下の表3は運営主体(実際に事業の運営を行う主体のこと)に対して行った、平日(学校がある期間)の朝のこどもの居場所の運営状況のアンケート結果です。平日の朝のこどもの居場所確保に向けた施策を行っている運営主体は3.5%に留まっています。つまり、市町村・運営主体両方において、この事業を実施している場所は少ないということを表しています。

表3 運営主体における平日の朝のこどもの居場所確保に向けた

施策の実施/未実施

(「こども家庭庁 令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業         小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する調査研究報告書     ~朝の居場所に係るデータ抜粋~」より筆者作成)

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

こどもを一人にしてしまうことに不安をもっている保護者は約30%いるけれど、実際にこの事業を実施している場所はかなり少ないということだよね。

八木
八木

そういうことなんだ。実施している場所がかなり少ない理由についても、同調査内で示されているよ。

表4は、市町村に対して行った、平日の朝のこどもの居場所確保に向けた施策を行うことができない理由に関するアンケート結果となります。

「居場所運営に従事する人材の確保が難しい」が70%、「居場所(場所)の確保・調整が難しい」が42.9%、「運営者を見つけるのが難しい」が35.7%と

様々な理由が挙げられています。

表4 市町村における平日の朝のこどもの居場所づくり事業が実施できない理由

(「こども家庭庁 令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業         小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する調査研究報告書     ~朝の居場所に係るデータ抜粋~」より筆者作成)

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

人材確保の問題に関しては、70%にものぼっているのか!かなり深刻な問題だよね。

八木
八木

そうなんだ。調査結果から分かるように、この事業を実施し、継続していくにはかなり高いハードルがあると言えるね。

八木
八木

だけど、この事業を実際に長期間継続して実施できている市町村があるんだ。それが神奈川県大磯町なんだ!

今回、実際に大磯町役場で当事業を担当されている方・大磯町で当事業を運営されている方、お2人にインタビューすることができました

インタビューを通じて、「事業継続のカギ」が見えてきました。

谷崎<br>(ゼミ生)
谷崎
(ゼミ生)

インタビューを通じて、たくさんの情報を得られそうだね。

八木
八木

うん、調査結果からは見えてこない情報を知ることができたよ!

これらのインタビューの内容に関しては、この記事の続きとなる「朝の小学生の居場所づくり事業って?Part 2~“事業継続”の観点から考える編~」(リンク)で紹介していきます。ぜひご覧ください。

朝の小学生の居場所づくりって?Part2~“事業継続”の観点から考える編~
こんにちは。産業能率大学橋本ゼミ13期の八木優花です。今回の記事では「朝の小学生の居場所づくり」について、“事業継続”の観点から考えていきます。Part 1では、「朝の小学生の居場所づくり」に関する事業内容や現状の課題点に触れていますので、...

皆さん、いかがでしたか?

放課後に小学生を預かる放課後キッズクラブ等(学童)について知っている方は多いかもしれませんが、朝にも見守り事業を行っている地域があること・国として推進されている事業であることを知っている方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。

今回の記事を通して、朝を一人で過ごさなければいけない小学生が一定数存在していること・国としてこの課題を解決するための取り組みが行われていることを少しでも知っていただければ幸いです。

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<引用文献>

子ども家庭庁(2025).「こども家庭庁 令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業 小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する 調査研究報告書 ~朝の居場所に係るデータ抜粋~」.

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/816b811a-0bb4-4d2a-a3b4-783445c6cca3/bbe7e44d/20250509_policies_ibasho_14.pdf ,(参照2025-10-20).

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