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「粋」が漂う伝統の「納め太刀」
~その想いを受け継ぐ人々~

まなぶ

みなさんこんにちは!

産業能率大学橋本ゼミ13期生の谷崎幸之助です。

9月21日、伊勢原市大山で「大山詣り街道まつり」が開催されました。

このイベントでは日本遺産の大山詣りの構成文化財である「納め太刀」を体験できる「納め太刀ウォーク」、謎解き、石細工、大山コマ絵付け体験など様々な催しが開催され、多くの人で賑わいました。

ところで「納め太刀」とは何か、ご存じでしょうか?

かつては庶民の生活にあった風習ですが、現在では極めて少なくなってしまっています。

著者自身、名前は聞いたことはあったものの、詳しい実態は知りませんでした。

このイベントを通して、学んだことを伝えられたらと思います。

納め太刀とは

納め太刀というのは、災難を除き幸福を招く「招福除災」を祈願し、大山阿夫利神社に木太刀を奉納するという行為です。これは大山詣りの一環として行われていました。

源頼朝が、天下泰平と武運長久を祈願し、「太刀」を奉納したのが始まりとされ、その後に江戸時代の庶民にも広まりました。木製の太刀(木太刀)に願文を記し、阿夫利神社や大山寺で祈願して持ちかえり、祀って1年間の守護としていました。一説によると、庶民では本物の「真剣」が持てなかったため、木の太刀にしたともいわれています。

翌年の参拝時には返納し、新しいものを受け取るのが風習でした。

太刀という言葉から、病魔を「断つ」、災いを「断つ」という願いを込めていたとされています。

納め太刀の多くは、長さ一尺(約30センチ)ほどでしたが、中には一丈(約3メートル)のもの奉納するものもいたそうです。江戸っ子らしい粋の見せ合いです。

納め太刀を持って登る大山は、神様のいる山なので、近くにある「良弁滝」というところで、滝に打たれ身を清めてから行ったそうです。

また、大山を「雨を降らせる神様」として信仰していたため、火事を消す「火消し」にも好まれていました。参拝者たちの姿は、歌舞伎や浄瑠璃、落語、川柳などに取り上げられ、大山詣りは、江戸の人口が100万人であった頃、年間20万人ほど訪れていたそうです。

しかし明治時代になり鉄道が走るようになり、納め太刀が電車内持ち込み禁止になったことから、習慣が廃れていきました。

そんな中で、この「納め太刀」を現代に復活させた人たちがいます。

伝統文化を現代に繋ぐ「いせはらPlusプロジェクト」

今回のイベントを支えたのが、「いせはらPlusプロジェクト」という団体です。

インタビューでは代表の青木様にお話を伺いました。

<いせはらPlusプロジェクトとは>

谷崎
谷崎

いせはらPlusプロジェクトとはどんな団体ですか?

青木さん
青木さん

2013年に立ち上げ、「アイディアでまちにプラスの価値を」というミッションを掲げ、伊勢原をより面白くすることを目的として活動しています。メンバーは伊勢原市在住がほとんどですが、もちろん市外の方もいますね。

谷崎
谷崎

なるほど!伊勢原をより魅力的に感じてもらうために発足したのですね。どのような形でプロジェクトを進めているのですか?

青木さん
青木さん

基本的に私がメンバーに呼びかけて進めています。メンバーは以前からの繋がりの人が多く、それぞれの得意分野や専門分野を活かして活動しています。

谷崎
谷崎

今回のイベントにおいても、設営やこまの絵付け体験など、それぞれの得意分野が光っているように感じました。

青木さん
青木さん

メンバーが主体的にクリエイティブな活動に従事で来ていることが、この団体の強みですね。

谷崎
谷崎

具体的にはどのような活動をされていますか?

青木さん
青木さん

特に「納め太刀」という文化に注目して活動しています。

谷崎
谷崎

先日のイベントも盛り上がっていましたね!

なぜ納め太刀に注目しているのですか?

青木さん
青木さん

伊勢原市固有の文化で、あまり知られていないのはもったいないので、で取り組んでいます。

実は私たちの活動もあって「納め太刀」は日本遺産構成文化財に登録されたんですよ(笑)

谷崎
谷崎

そのような裏話があったのですね。確かに、今回のイベントに参加するまでは「納め太刀」を詳しく知りませんでした。

青木さん
青木さん

市内の人にも中々認知されていなくて、本当にもったいないことです(笑)

<活動で大事にしていること>

谷崎
谷崎

「いせはらPlusプロジェクト」で活動する上で大事にしていることはありますか?

青木さん
青木さん

楽しい」だけではなく、「何のためにやるのか」という思いを大事にしています。子どもたちが笑顔になってくれる瞬間が、一番嬉しいんですよ。

谷崎
谷崎

温かい雰囲気ですね

青木さん
青木さん

そうですね。子供たちが来てくれれば、親御さんもイベントに来てくれるので、世代を超えて文化を伝えられるんです。そのような人との繋がりを本当に大事にしています。

谷崎
谷崎

人との繋がりを大事にして活動している点がとても魅力的に感じます。

私も当日イベントに参加して、多くの人との繋がりを感じることができました。

<今後に向けて>

谷崎
谷崎

今後はどのような取り組みを考えていますか?

青木さん
青木さん

納め太刀」というものに、いつでも誰でも触れられるような環境を作りたいです。文化としてあるのに、触れる機会が少ないのはもったいないと感じています。

谷崎
谷崎

いつでも「納め太刀」を体験できたら、もっと認知度が上がると思います!

取材を通して、現代に「納め太刀」という文化をもう一度根付かせようとしている熱意がすごいという事を感じました!また、いせはらPlusプロジェクトさんの魅力がひしひしと伝わって気ました。

インタビューに答えてくださりありがとうございました!

当日の様子

当日は親子連れを始め、多くの人々で賑わっていました。

メインの納め太刀ウォークやスタンプラリーは盛り上がりを見せていました。

著者自身も納め太刀を実際に担いで会場から大山ケーブル駅周辺にある八意思兼神社まで20分程度歩きました。

実際に持って見ると長いものはかなり重く、江戸の人たちのように、「」を見せるのも大変だと思いました。

また、会場ではコマの絵付け体験や、日向石磨きなど、普段では見ることができないものを知れてとても貴重な時間を過ごすことができました。

まとめ

今回のイベントを通して、昔からある風習が廃れてしまわないように、伝えていくことの大切さを改めて感じました。そして、文化を守るには、それを支える人々の思いを伝えていくことも必要だと実感しました。

現状では納め太刀を体験するイベントは少ないですが、新しく知ろうとしてくれている方の障壁を下げていければ良いなと思いました。

納め太刀は、伊勢原だけではなく、江戸時代の文化とも深く結びついていると気づきました。現代においては、人と文化を繋ぐ役割を果たすと思います。

(参考)

https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kyoudo_archives/ooyama/sanno_univ/know/history/20160218_195719.html 

納め太刀 歴史と文化 – 知る | 丹沢・大山 歴史街道ものがたり デジタルアーカイブhttps://www.city.isehara.kanagawa.jp/oyama_mairi/about.html

大山詣りの概要 伊勢原市日本遺産協議会

https://toki.moo.jp/cd-mihon/tanzawa-new/contents/01yama/mt-kahitu/01ohyama/05osameta.html 

 01大山、三ッ峰「05-納め太刀」江戸庶民の信仰と行楽の地|日本遺産ポータルサイト

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