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獣害問題って何だろう。畑への被害や狩猟免許取得、猟師の活動から見えてきた大変さ。

まなぶ

皆さんこんにちは。産業能率大学橋本ゼミ12期の山田孝太です。

突然ですが、獣害被害という言葉を耳にしたことはありますか?

獣害被害とは、野生動物によって引き起こされる問題であり、人間に何らかの不利益をもたらすことを言います。主に、野生動物によって、農作物が食べられてしまうということが挙げられます。

近年、シカやイノシシなどの野生動物が増えすぎたことで、獣害被害が深刻になっています。令和2年度の農産物総被害額は約161億円を超えているそうです。

全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和2年度):農林水産省

また、把握できているだけで約161億円なので、実際はもっと高いのでは?とも言われています。

最近だと、東北を中心にクマが市街地に出没することが多かったり電車にシカが衝突して電車が遅延してしまったりするということも起きています。 日本全体として、農業への被害だけではなく、その他への被害も広がっているのです。

なぜ、私が獣害問題に興味を持ったのか。

橋本ゼミでは、2023年に学祭にてジビエカレーを販売しました。

そこでは、ただ売るだけではなく、お客さんに獣害について知ってもらうこと、そしてジビエカレーを食べることが獣害被害の解決に向けて微々たるものだが貢献できること。この2点を伝えることを意識していました。

獣害やジビエに興味を持った私は、鹿肉の加工施設に行き、話を聞いてきました。

鹿という動物の新たなる可能性

獣害の深刻さや抱えている問題が多すぎることや複雑化していて、簡単な問題ではないこと。何より、本気で困っている人がいることを知りました。

そこで、獣害被害を受けている人を少しでも減らしたいと考えるようになり、何かできることは無いかなと考えていました。

山田孝太
山田孝太

獣害被害を受けている人は農家さんが多いよな…実際に現場に行くことで、何かできることがあるかもしれない。

伊勢原市の農家さんに連絡してみよう!!

連絡してみたら、

農家さん
農家さん

僕の畑シカやイノシシの被害に遭っているからよかったら今度くる?

山田孝太
山田孝太

いいんですか??行きます!!

伊勢原市で農業を行っている方からお誘いをいただき、獣害被害に遭っている現場に行くことになりました。

畑での出来事

畑作業に参加することになりました。

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

畑では実際に獣害被害はあったの?

山田孝太
山田孝太

イノシシが高頻度で畑に来て、荒らしていくことがあるよ。この写真はイノシシが畑を荒らした後なんだけど、土の中にいるミミズなどを食べるために、土を掘り返してしまうんだよ。

山田孝太
山田孝太

これは実際に畑に来たシカを撮った写真なんだけど、畑に来て野菜を食べられてしまうことが多いんだよね。

※こちらの写真は実際に畑に来たシカを撮影したものです。

農家さんに獣害対策について聞いてみました。

山田孝太
山田孝太

獣害対策には、電気柵の設置が有効っていう話を聞いたことがあるのですが設置する予定はありますか?

農家さん
農家さん

それが、以前設置しようかと思ったんだけど、思ったよりも費用が掛かるみたいで断念したんだよね。僕みたいな個人で畑を持っていて、販売を目的にしていないところだと金銭的な理由から設置するのが難しいんだよね。

山田孝太
山田孝太

そうですよね。金銭的に考えると現実的ではないですよね。

農家さん
農家さん

あとは、やっぱりもう定年を迎えていて若くないから、畑を維持するだけで精一杯なんだよね。だから、獣害対策を行うことに余力が無くて、充分に対策を行えていないのが現状なんだよね。

山田孝太
山田孝太

その結果、獣害被害をダイレクトに受けてしまうんですね。

獣害被害に遭っている畑に参加することで、被害の実情や農家さんの苦労を知ることができました。

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

農家さんは大変だね

山田孝太
山田孝太

ある農家の方は、収穫直前のかぼちゃを全てイノシシに食べられてしまったことがあるらしいよ。

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

そんなことがあるんだね。

獣害被害に遭ってしまうと農家のやる気がそがれ、農業をやめるという選択を取る人も決して少なくありません。その結果、耕作放棄地に繋がることもあります。

私は、このような問題に直面して、少しでも獣害被害を減らしたいと思うになり、何かできることはないかなと考えました。

調べていくうちに、野生動物を捕獲することが、被害を減らせる一つの要因になること、そして、国全体として個体数を減らしていく取り組みをしていることを知りました。

山田孝太
山田孝太

よし!実際に捕まえよう!そのためには、狩猟免許を取るところからだ!!

狩猟免許取得

野生動物を捕獲することが獣害問題の解決のための一つの大きな要素になっています。

また、野生動物を捕獲するために、狩猟免許が必要になります。

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

狩猟免許を取得したら何ができるようになるの?

山田孝太
山田孝太

狩猟免許を取得したら、鳥獣保護管理法に基づき、狩猟を行うことができるようになるよ!

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

そうなのだね!ありがとう!

2024年6月に狩猟免許(わな猟)の試験に受験し、7月に合格発表がありました。

無事、狩猟免許(わな猟)を取得することができました。

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

これで立派な猟師じゃん!

山田孝太
山田孝太

いや、実はそうでもないんだ…

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

え?そうなの?

山田孝太
山田孝太

野生動物を捕獲するためには、狩猟免許を取得するよりも難しい解決すべき課題がたくさんあったんだ。

狩猟免許を取得した後にも、野生動物を捕獲するためには準備することがたくさんあるのです。知り合いの猟師さんに聞いてみました。

山田孝太
山田孝太

狩猟免許を取得したのですが、他に準備することはありますか?

猟師さん
猟師さん

まずは、場所を探すのが難しいと思うよ。大きく分けて二つ解決すべき問題があって、

一つ目は、土地の所有者との連携だよ。狩猟は、山や畑など誰かが所有している土地で行う必要があるから、土地の所有者と連携を取る必要があるんだよ。

山田孝太
山田孝太

じゃあ、土地の所有者と連絡が取れれば狩猟を始めることができるんですか?

猟師さん
猟師さん

いや、もう一つ問題があって、地域によっては猟師同士で暗黙の了解で狩猟していい場所が決まっていることがあるんだよ。(例:Aさんは○○山のZの範囲、Bさんは○○山のW範囲)

土地の所有者と連携を取れたからと言って狩猟を始めてしまうと猟師とのトラブルの原因になってしまうんだよ。だから、場所を探すときは慎重になった方がいいんだよ。

山田孝太
山田孝太

そんな問題があるんですね。

次に、野生動物を捕まえることができた後にもやるべきことがたくさんあります。

わな猟の場合

  1. わなで捕獲する
  2. 止め刺しを行う(ナイフやハンマーを用いて行います(銃を用いることもあります))
    止め刺しとは、わなで捕獲した野生鳥獣にとどめを刺すことです。
  3. 運搬
  4. 土に穴を掘って埋める

ジビエとして活用するためには、

  1. わなで捕獲する
  2. 止め刺しを行う(ナイフやハンマーを用いて行います(銃を用いることもあります))
  3. 加工施設に運搬
  4. その後解体作業

上記のように捕獲した後にもやるべきことが多いのです。また、野生動物の命をいただくということは、責任をもって処理することが必要不可欠になります。

そして、何より上記で述べたようなことを一人で行うのはとても難しいのです。止め刺しは、野生動物が生きている状態なので、わなを破壊していつ襲ってくるのかわかりません。また、数十キロある個体を運搬するのはとても労力がかかります。

また、道具を揃えたり、狩猟者登録をしたりするのにもお金がたくさんかかります。

ただ狩猟免許を取得したからと言って、狩猟を始められるわけではないのです。

場所の確保、捕獲後の処理、金銭面などを解決する必要があるため、狩猟を行うのは(特に始めるのは)ハードルが高すぎました。

猟師についていきました

狩猟免許を取得したが、狩猟を始められずにいましたが、

猟師さん
猟師さん

二ホンジカ捕獲のために設置してあるわなの見回りいくから一緒に行く?

山田孝太
山田孝太

いいんですか??ぜひ、行きたいです!

猟師さんからこのようにお誘いをいただいたので、わなの見回りについていくことになりました。

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

実際に行ってみてどうだった?

山田孝太
山田孝太

捕獲作業現場に行くのは初めてだったから、若干恐怖心があったよ。わなにかかっていたらどうしようって思ってたよ。

山田孝太
山田孝太

そしたら、一頭二ホンジカのオスがわなにかかっていたよ。

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

どんな様子だった?

山田孝太
山田孝太

くくりわなだから、足にわながかかっていたんだけど、シカが暴れていたせいなのか、足が血だらけになっていて、骨が剥き出しになっていたよ。今にも足が切断されて逃げ出しそうだったよ。

シカに近づいていくと命の危険を悟ったのか逃げ出そうととても暴れていたよ

三宅さん(ゼミ生)
三宅さん(ゼミ生)

そんなことがあるんだね。

山田孝太
山田孝太

でも、猟師さんは落ち着いていて、銃を用いて二ホンジカを処理していたよ。その後に、運搬して穴を掘って埋めたよ。

初めて野生動物が銃で撃たれている現場に行きましたが、シカの「殺される」ってわかったときの表情やシカが銃で撃たれる瞬間、シカを運搬するために持った時の足の感覚、埋めるときの感覚は、どれも衝撃的で、そこでしか味わうことのできない感情に襲われました。

改めて、野生動物と関わることは簡単なことではないし、簡単には関わっていけない領域だとも考えさせられました。

まとめ

今回のブログでは、私が体験してきたことを基に執筆しています。

今でも畑に被害は起き続けています。また、畑だけではなく、市街地への出没など人に直接被害を与えることもあります。

実際に獣害被害を受ける人は少ないと思います。ただ、被害を受けて困っている人がいるということは解決しなければならない問題であると考えています。

そして、そのような被害を減らしていく為には、増えすぎた野生動物を捕獲していくことが必要になってきます。しかし、野生動物を捕獲していくことは容易なことではなく、始めるのにもとても労力がかかります。狩猟免許を取得したからと言って、すぐに始められるわけではありません。沢山の準備を行ったうえで始めて行うことができます。

また、実際に捕獲作業を手伝いましたが、そこには普段の生活からは想像できないものがありました。

猟師さんたちは、日々野生動物と関わっています。そこには、中々理解されないこともあるかもしれませんが、常に危険と隣り合わせで社会の問題を解決するために活動している人がたくさんいます。

一見、自分には関係がないと思う人もいると思います。しかし、皆さんが生活しているすぐ近くで獣害被害は起こっています。

獣害問題は見て見ぬふりをしてはならない、皆さんが当事者として考えていき、付き合っていくべき問題であると私は考えています。

普段食べている野菜、そしてジビエはこのような問題を背景に抱えて消費者の皆さんの基へ届いているのです。

正直なところ、獣害問題を知ったからと言って、何かすぐにできることは少ないのかもしれません。まずは、興味を持っていただけたら幸いです。

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