皆さん、獣害問題という言葉を聞いたことはありますか??
獣害とは、鹿や猪、熊などの野生動物が社会に何らかの被害を与えることを指し、それらによって生じる問題を総称して「獣害問題」と言います。近年、市街地への熊の出没が相次ぎ、より身近な問題になってきていると思います。
2025年では、神奈川県伊勢原市でも熊の目撃が相次いでいます。目撃場所が私(山田孝太)が在籍している産業能率大学のある近くでもあり、他人事ではありません。

私は、獣害問題に対して、様々な側面から活動を行っています。2024年には狩猟免許を取得し、猟師の方と鹿の捕獲作業を行いました。
以前執筆したブログに、狩猟免許取得や鹿の捕獲作業について詳細を掲載しています。
そして今回は、神奈川県伊勢原市の畑に、野生動物を撮影するためのトレイルカメラを設置し24時間撮影することで分かってきたことをお届けします。
※トレイルカメラとは、屋外で主に野生動物を撮影するためのカメラです。カメラは24時間作動していて、センサーが動く物体を捉えると自動で録画されます。
つまり、365日24時間撮影可能で、尚且つ動く物体を検知した場合のみ録画されるため、野生動物の動向を探るのにはとても便利なカメラです。
トレイルカメラを設置しました
~2025年7月上旬~
神奈川県伊勢原市の畑に、トレイルカメラを設置しました。
この畑は、大山の近くにあり、そして山に面しているため、以前から野生動物が畑に来ていることはわかっていました。
しかし、どんな動物が、どのくらい来ているのかまでは分からなかったため、今回トレイルカメラを設置することで明らかにしたいと考えました。
そして、初めて撮影されていた動物は鹿でした。
こちらの動画が、初めて鹿をしっかりと捉えたものになります。
その後、鹿が初めて撮影されてからの6日間で4頭の鹿が撮影されていました。
カメラを設置する以前から、野生動物が畑に来ていることはわかっていましたが、こんなにも来ているとは想定外でした。
すぐに、対策をしなければ収穫間近の夏野菜が食べられてします。
そんな風に考え、鹿がどこから侵入しているのかを明らかにするために、畑を観察してました。
すると、ネットがたるんでいて、低くなっている箇所を発見しました。

上記画像の、赤い丸で囲わている箇所が、ネットのたるんでいた部分になります。
そして、このネットの付近に鹿の足跡が大量にありました。

上記画像の、赤い丸で囲わている箇所が、鹿の足跡になります。
ネットの高さは、おおよそ1mあるのですが、これでは鹿が飛び越えてしまいます。
そのため、一時的にでも鹿の侵入を防ぐためにも、ネットの上部にロープを設置しました。

すると!!
ロープを設置する前は、6日間で4頭来ていたのですが、ロープを設置してからは20日間で5頭しか来ていませんでした。ネットの上部にロープを設置し、飛び越えにくくすることで、鹿の侵入を防ぐことができました。
しかし、ある日を境にまた鹿が撮影されていることが多くなっていました。
なんと、鹿が頻繁に撮影されだしてからの7日間で、13頭の鹿が撮影されていました。
動画を確認してみると、ロープを設置しているところから、畑に侵入していました。
現場を確認してみると、新しくネットが破かれていました。

少し見えにくいですが、上記画像の赤い丸で囲わている箇所が、新しく破かれてしまった箇所になります。
これこそが獣害問題の難しさを表しています。
野生動物に対して何か対策を施しても、すぐに対策が無力化されてしまいます。
まさにいたちごっこです。

ネットに穴を開けて畑に入ってきてしまうんだね。

そうなんだよね。野生動物が、ネットを破って畑に入ってきてしまうから、ネットにたくさん穴が開いてしまっているよ。他には、穴を掘って、ネットの下を潜って入ってきたり、飛び越えて入ってきたりしてしまうね。

でも、何か対策してもすぐに他の方法で畑に入ってきてしまうんだよね。

そうなんだ。どんな対策をしても、すぐに別の方法を見つけ出すからね。だから、知り合いの農家さんは、「野生動物が畑に来てしまうのは、もうしょうがないこと」と言っていたよ。どうすることもできないって。
トレイルカメラを設置して分かってきたこと
畑にトレイルカメラを設置してから、65日経過しました(2025年9月7日時点)。カメラを設置し、畑に来ている動物を観察することで、様々なことが分かってきました。
- どんな動物が来ているのか?
撮影されていた動物は、
鹿
猪
ウサギ
タヌキ
カラス
上記の5種になります。
- これらの動物がどのくらい来ているのか?
65日間で、合計152頭/羽/匹畑に来ていました。
動物ごとで見てみると、
猪が95頭、鹿が52頭、タヌキが1匹、ウサギが3羽、カラスが1羽撮影されていました。
また、猪は家族(複数)で来ることが多いのですが、鹿はほとんどが単独で畑に来ていました。
猪は、約70%の割合で家族(複数)で来ていましたが、鹿が家族(複数)で来ていた割合は僅か約2%でした。
- どの時間帯に来ているのか?
動物ごとで時間帯を比較してみると興味深い結果が見えてきました。
猪は、夜20時~夜中の4時の間しか、畑に来ていませんでした。その中で、最も来ている時間帯は、0時台で24頭でした。
次に鹿は、5時台・6時台・9時台・11時台・14時台は一回も来ていませんでしたが、その他の時間帯に満遍なく来ていました。
最も来ている時間帯は、3時台の6頭。次いで、1時台・7時台・15時台の5頭でした。
動物ごとに、畑に来ている時間帯が異なることが分かってきました。

野生のウサギは初めて見た。動画で見てみると、どの動物もかわいいね。

そうなんだ。本当にどの動物も可愛いんだよ。でも、この動物たちによって、年間150億円以上の農作物への被害が発生してしまっているんだよね。

少し、複雑な気持ちになるね。あと、猪が最も多く来ているんだね。

猪は、家族で畑に来るから、数が多くなるね。一度に6頭来ることもあるよ。

一度にそんなたくさん来るんだね。

猪の親が子供に畑の場所を教えている側面もあるんだ。「ここに行けば食べるものがある」と。そうすると、猪の子供たちは、畑の場所を覚え、将来親になったときに、自分の子供を連れてくるようになるんだよね。
どんな獣害被害が発生しているのか
野生動物がたくさん畑に侵入することによって、主に3つの被害を受けています。
- 野菜が食べられてしまう
- 畑を荒らされてしまう
- ネットなどの破壊
一つ目の野菜が食べられてしまうという被害ですが、収穫量が減少してしまうため、農家に対して金銭的な被害を、直接的に与えてしまいます。
こちらの動画は、鹿がきゅうりの葉を食べている様子になります。
次に、こちらの画像は、野生動物によって食べられてしまったスイカになります。

次に、こちらの画像は、野生動物によって食べられてしまったきゅうりになります。

このように、野生動物が野菜を食べてしまうのです。
そして、野生動物たちは収穫直前の野菜を狙って食べることが多いです。あと少しで収穫できると思っていても、動物に食べられてしまい、収量が大きく減少してしまうケースも少なくありません。
二つ目の畑が荒らされてしまう被害は、まずはこちらの動画を見ていただきたいです。
動画のように、野生動物が畑に生えている植物を食べてしまうのです。また、猪はミミズを食べるために、畑の土を掘り起こしてしまいます。
動画の13秒~15秒あたりは、うりぼうが土を掘り起こしているのが、分かりやすく映っています。
そして、下記の画像は、野生動物が植物を食べたり、土を掘り起こしたりした跡になります。
土が見えている部分が、その跡になります。

一見すると、何も問題が無いように見えますが、野生動物が植物を食べすぎることによって、生態系のバランスが崩れるという問題に繋がっていきます。
畑の中の生態系や土の栄養素のバランスが崩れ、良質な野菜が育たなくなる可能性もあります。
三つ目のネットなどの破壊は、先ほども述べたように、畑に侵入するために、ネットを破壊されてしまいます。

このように、野生動物が畑に来ることで、様々な被害が発生してしまっています。

こんなにたくさんの動物が来ているから、たくさんの被害が発生してしまうよね。

そうなんだよね。畑に行くたびに新しい被害を見つけるんだよね。何とか獣害被害を減らしたいとは思うんだけど、こんなにも野生動物が畑に来ているのを知ると、防ぎようがないのでは?とも考えてしまうね。

そうだよね。でも、獣害被害って特定の畑だけで起こっていることではなく、地域全体で抱えている問題なんだよね?

その通りなんだよね。だからこそ、農家単独で獣害対策を行うのではなく、地域全体で取り組んでいくことが、獣害被害軽減に繋がっていくと思うんだよね。
わなを設置しました
畑にトレイルカメラを設置し、畑に想定を大幅に上回る動物が来ていることが分かりました。
そして、様々な被害が発生していることが明らかになりました。
そこで、トレイルカメラで分かったことを農家さんに報告しました。

畑に、こんなにも多くの動物が来ているなんて、想像もしていなかったよ。

そうですね。僕も想定外でした。実際に、きゅうりの葉を食べている鹿の様子が映っていて、このままだと、野菜が食べられてしまったり、畑を囲っているネットがたくさん破かれたりしてしまいます。

どうにか対策できないかね。山田君狩猟免許持ってるよね?捕まえることはできないかな?

でも、今猟期じゃなくて、捕獲することは難しそうなんですよね。
※猟期とは、野生動物を狩猟できる期間のことです。
しかし、後日、調べてみると以下のような制度がありました。
伊勢原市のホームページによると、以下のいずれかの条件に当てはまると年間を通してわなの使用が認められ、野生動物を捕獲することができるそうです。
- 鳥獣による農作物被害等が現に生じているかまたその恐れがあり、原則として被害等防除対策によっても被害などが防止できないと認められるとき
- 学術研究または調査目的であると認められるとき
- 傷病鳥獣保護のため当該鳥獣の傷病治療後、放野による本来の生息域への復帰を目的とした場合
農家の方と相談し、この制度を利用して、畑にわなを設置し、野生動物を捕獲することになりました。
こちらが、畑に設置しているわなになります。

こちらが、わなに設置している標識になります。

野生動物が、エサを求めわなの中に入り、トリガーを足で踏むと、入口が閉まる仕組みになっています。

畑にわなを設置したんだね!

獣害を防ぐという観点では、畑に来ている野生動物を捕獲することが、重要になってくるんだ。
猟師の方々によって、山で野生動物が捕獲されているけど、それは個体数調整ということが目的になっているんだ。
長期的にみると、野生動物の個体数が調整され、獣害被害も減少していくんだけど、農作物への被害を直接的に減らすためには、畑に来ている野生動物を捕獲することが、最も重要になってくるんだよね。

山で捕まえつつ、畑でも捕獲することが重要なんだね。
自分でできる範囲は限られてはいるけど、一歩ずつ取り組んでいくことが獣害被害を減らすことに繋がりそうだね。
今後に向けて
現在、日本全国的にみても、獣害問題は深刻になっています。令和5年度では、年間の被害額が約164億円になっています。
そして、私が通学している神奈川県伊勢原市でも獣害被害は発生していて、尚且つ、私が携わっている畑でも、毎日のように野生動物が畑に来て、荒らしてしまっています。
私は、そのような現状に対して、何か貢献したい、解決したいと考えています。
今後は、
- 畑に来ている野生動物の動向の把握
- わな設置が与える影響
上記2点を引き続き調査していきたいと考えています。
そして、今後の活動は、随時My Playful TonwのSNS(XとInstagram)で発信していきます。ぜひ、SNSのフォローよろしくお願いします。
こちらがInstagramアカウントになります。
そして、こちらがXアカウントになります。
また、私の研究に関する投稿は、InstagramやXにて「#鹿遭遇情報」で閲覧することができます。ぜひ、過去の投稿も含めてご覧ください。
また、私と同じような研究を行っている方や今後行おうとしている方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければ幸いです。
まとめ
今回は、神奈川県伊勢原市の畑にトレイルカメラを設置し、分かってきたことをお伝えしてきました。
トレイルカメラを設置したことで、畑にどんな野生動物が、いつ、どのくらい来ていて、どんな獣害被害を発生させているのかが分かってきました。
そして、私が携わっている畑では、毎日のように様々な野生動物が来ていて、獣害被害が発生しています。
このようなことは、特定の畑だけで起こっていることではなく、日本全国的に起こっています。
そのため、現在も野生動物によって、農家の方々は悩まされています。
そこで、「どうすれば畑に侵入されないか」や「どうすれば野菜が食べられないか」などを考え、対策を行いますが、いたちごっこになっているのが現状としてあります。
また、獣害対策として、わなによる捕獲などもありますが、もっと地域全体で対策を行っていくことが、必要不可欠だと私は考えています。
本ブログを見て、少しでも獣害問題に興味を持っていただいた方や獣害問題を知ってくれた方がいれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございます。