こんにちは。産業能率大学橋本ゼミ13期の八木優花です。
今回の記事では「朝の小学生の居場所づくり」について、“事業継続”の観点から考えていきます。
Part 1では、「朝の小学生の居場所づくり」に関する事業内容や現状の課題点に触れていますので、気になる方はぜひPart 1(リンク)を読んでからこちらの記事をお読みください!


前回の記事では「朝、家で一人で過ごさなければならない」小学生が一定数存在していることがこども家庭庁の調査結果によって分かったよね。

そして、そういったこども達のために「朝の小学生の居場所づくり」が行われているという話をしたんだ。

(ゼミ生)
そうだったね!

(ゼミ生)
でも、居場所の運営に従事する人材確保が難しいことや、場所の確保や調整が難しいこと等の課題があって、なかなかこの事業を実施できている市町村・運営主体(実際に事業の運営を行う主体のこと)は少ないんだよね。

こういった課題が多くある中で、神奈川県の大磯町では、実際に当事業を実施できているんだ。

実際に、大磯町役場で当事業を担当されている方と、大磯町で事業を運営されている方(運営主体の方)、お2人にインタビューすることができたよ。
インタビューを通じて、”事業継続のカギ”が見えてきたんだ!
大磯町における「朝のこどもの居場所づくり事業」

大磯町では、2016年から継続して「朝のこどもの居場所づくり事業」を実施しているんだ。

(ゼミ生)
2016年から!?かなり長い期間行っているんだね。

実は、平成27年度に神奈川県のモデル事業として「朝のこどもの居場所づくり事業」を大磯町と海老名市で実施したことをきっかけに、そのまま継続して実施しているんだ。
大磯町では、放課後に小学生の遊び・生活の場を提供している学童保育所の施設を用いて、学童保育所の事業者が「朝のこどもの居場所づくり事業」に取り組んでいるんだ。

(ゼミ生)
なるほど、放課後に利用できる学童と同じ場所で朝も見守ってくれるんだね。

そういうことだね。
でも、朝の事業と放課後の事業は全くの別物であることには注意しなければいけないよ。 朝の事業は朝の事業で登録し、放課後の事業は放課後の事業で登録するんだ。
だから、「朝のこどもの居場所づくり事業」だけを登録している人もいれば、放課後の事業だけ登録している人もいる。

(ゼミ生)
そういうことか!つまり、同じ事業者が両方運営しているけれど、事業自体は別ってことだね。

そう!
今回は、大磯町で「朝のこどもの居場所づくり事業」を担当されている町民福祉部 子育て支援課の方と、実際に事業を行っている大磯学童保育所「磯の子クラブ」を運営されている株式会社明日葉様の方にインタビューさせていただいたよ。

インタビューを通じて、運営側から見た当事業の事業継続のポイントが見えてきたんだ。
大磯町 町民福祉部 子育て支援課の方へインタビュー

大磯町では「朝のこどもの居場所づくり事業(以下、朝の居場所)」を長く継続されていると知りました。一方、日本全体を見た際に、当事業を実施できている市町村・運営団体は少ないというデータもあります。
なぜ、この事業を継続できているのでしょうか?

支援課の方
事業を継続できている理由として
「学童保育所が小学校内にあること」が挙げられると思います。

学童保育所が小学校内にあることが重要なのですか?

支援課の方
はい、とても重要です。
もし仮に、小学校外にある場所(例:児童館等)で朝の見守りを行ったとします。すると、その場所から小学校へ登校する際の安全管理面で課題が生じてしまいます。

確かに「(「朝の居場所」の実施場所から)どのような道で学校に向かって、その際、事故やトラブルあった場合はどうするのか?」「間のスタッフ配置は?」といった様々な問題がありそうですね。

支援課の方
そうなんです。
ですが、小学校内にある学童保育所で朝の事業を実施できれば、、児童を安全に学校へ送り出すことができるんです。
実は、「朝の居場所」を実施する場合、学校側とはよく調整する必要があるんです。

なるほど。
これまで「朝のこどもの居場所づくり事業」単体で捉えてしまっていました。ですが、こども達はそのまま学校に行かなければいけないため、学校との調整をきちんとしなければ実施できない事業なんですね。新たな気づきでした。

支援課の方
他にも、事業が実施できていると考えられる要因があって、「朝の居場所」と放課後(学童)は別々で登録するため、事業自体は完全に分離したものになりますが、「朝の居場所」は学童と(小学校内の)同じ場所・同じ事業者さんで運営をしています。そのため、新たに事業者を探したり、新たに場所を確保したりする必要がなかったことも、事業が実施できている大きな要因だったと捉えています。

やはり、小学校内に学童保育所があることがポイントなんですね。
本日は貴重なお話をありがとうございました。

支援課の方
ありがとうございました。
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大磯町役場 町民福祉部 子育て支援課の方へのインタビューを通じて、事業継続のカギが「学童保育所が小学校内にあること」が大きな要因だと理解できました。
インタビュー内でもお伝えしましたが、私自身どうしても事業単体で捉えてしまっており、学校との繋がりをあまり考えられていませんでした。そのため、これまでと異なる視点でこの事業を理解することができ、非常に学びになったと思います。
続いては、大磯小学校内の学童保育所「磯の子クラブ」で、実際に「朝のこどもの居場所づくり事業」を運営されている事業者、株式会社明日葉様の担当者の方にもインタビューをさせていただきました。
担当者の方に「大磯町での当事業の需要」「当事業に従事する人材の確保」をお聞きすることで、大磯町での「朝のこどもの居場所づくり事業」の事業継続について深めていきました。
株式会社明日葉様へインタビュー~利用者のニーズ~

こども家庭庁の調査結果では、朝にこどもが一人で家で過ごす時間があり、不安があると回答された保護者の方が約30%いることが明らかになりました。
実際には、どのくらいの児童が当事業を利用しているのですか?

学校がある全ての日に、小学校開門前の7時15分から小学生の受け入れを行っています。1日に平均して20~30人の児童が利用し、雨の日等は30人を超えますね。

そんなにも多くの児童が利用しているのですね。やはり需要があるということですね。

利用児童数の多さには大磯町の“位置”が大きく影響していると思います。
大磯町はJR東海道線沿いに位置しており、多くの保護者の勤務先が町外であると思われます。その為、保護者の方が家を出る時間が早くなり、需要が高まっていると考えられます。

なるほど。
自宅から勤務地までの距離が、朝の居場所の利用児童数に大きく影響しているんですね。自宅から勤務地までの距離に関しては、大磯町以外の他の地域でも影響している可能性がありそうです。
株式会社明日葉様へインタビュー~人材確保~

続いて「朝のこどもの居場所づくり事業」における人材確保についてお聞きしたいです。
こども家庭庁の調査では、「居場所運営に従事する人材の確保が難しい」と回答した市町村が70%(※1)という結果が明らかになっています。こういった現状がある中で、どのようにして人材を確保されているのですか?

私達は、学童保育所の職員・スタッフの方々の3人に加えて、有償ボランティアの方にも協力していただいて朝の居場所をつくっています。
以前までは職員・スタッフの方々を2人配置していたんですが、朝の居場所の利用児童数が20人前後から20人後半にまで増えたことから、3人に増やしました。
この事業はあくまでも“見守る”ものであるので、有償ボランティアの方は特別な資格を有している必要はないんです。

ボランティアの方々に協力してもらうことで、人材確保を行っているんですね。ボランティアの方々は、どうやって募集しているのですか?

朝の居場所づくりでは『早朝の時間からのボランティア活動』というところで地域の方の協力が必須となります。事業開始当初は、毎週水曜日の放課後に小学校で行われている「放課後子ども教室」のスタッフへ「朝の居場所もやってみませんか」とお声掛けし人材の確保に注力したと伺っています。また、現在でも、町の広報にボランティア募集のお知らせを掲示し、直接連絡を頂くこともございます。

この事業の実施には、近くに住んでいる地域住民の方々の協力が欠かせないということですね。とても学びとなりました。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

ありがとうございました。
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事業を運営されている担当者の方へのインタビューでは、立地条件等を理由に大磯町において当事業のニーズが存在していること・地域の方々と協働して事業を運営していることを理解することができました。
地域の立地条件によって、この事業のニーズにも差が生まれるのではないかと感じます。
まとめ
大磯町 町民福祉部 子育て支援課の方へのインタビューでは、学童保育所が小学校内にあることが事業継続をできている大きな要因の1つであると分かりました。
そして、株式会社明日葉様の当事業の担当者の方へのインタビューでは、大磯町では自宅から勤務地までの距離に起因する利用者のニーズがあること・近隣住民の方の有償ボランティアによって人材確保をしていることを理解できました。

(ゼミ生)
大磯町として当事業を推進していることに加えて、様々な良い条件が重なっているため、長い期間「朝のこどもの居場所づくり事業」を継続できているんだね。

そういうことだね!
「朝の小学生の居場所づくり」は一定のニーズはあるものの、様々な条件をクリアしなければ実施は難しい事業なのだと痛感しました。
そして、この「朝のこどもの居場所づくり事業」を継続して行うためには、小学校・地域と協力することが必要不可欠になるのではないかと思います。
そのためには、まずは「朝一人で過ごさなければいけない」こどもがいることを知ってもらうことが大切だと感じています。
この記事を通して、少しでも現状を知っていただけていれば幸いです。
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<参考文献>
※1
子ども家庭庁(2025).「こども家庭庁 令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業 小学校の長期休業中におけるこどもの居場所に関する 調査研究報告書 ~朝の居場所に係るデータ抜粋~」.
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/816b811a-0bb4-4d2a-a3b4-783445c6cca3/bbe7e44d/20250509_policies_ibasho_14.pdf ,(参照2025-10-20).

