2022年12月10日(土)、伊勢原駅前で開催されていたイベントの1つが幕を閉じました。
その名は「湘南イセハライチ」。
2022年の5月にスタートした本イベントは、会場である湘南いせはらplaceの年内閉館に伴い開催終了を迎えました。その一方で、新たに伊勢原を盛り上げる地域イベント事業が立ち上がっているという噂が…。今回は、そんな湘南イセハライチの開催秘話と、新しく始まる「プレイス123」事業について取材してきました!
湘南イセハライチって?
湘南イセハライチとは、NPO法人イセハライクが主催し、毎月第2土曜日に湘南いせはらplaceで開催されていた室内型地域イベントのことです。従来伊勢原総合運動公園で山のイセハライチが開催されており、その駅前版として誕生したのがこの湘南イセハライチです。開催時にはキッチンカーやフリーマーケット、ワークショップなどが出店されており、毎回ミュージシャンの音楽ライブが実施されるなど賑わいを見せていました。
会場である湘南いせはらplaceは元遊技場でしたが、土地建物のオーナーである濱田精麦株式会社のご厚意により、地域活性化に繋がるイベントの場として、貸しホールに利用されていました。
プレイス123って?
湘南イセハライチの終了に伴い、伊勢原を盛り上げるための新たな憩いの場が誕生する事になりました。それが「プレイス123」事業です。伊勢原市内の3つの場所を「プレイス」とし、様々なイベントが今後開催される予定です。2023年春頃のスタートを目処に現在準備の最中とのことです。
「プレイス123」出店場所一覧
プレイス1:アサヒショッピングセンター1F(「来るりん」跡地)
プレイス2:アサヒショッピングセンター地下(現・倉庫)
(伊勢原駅北口から徒歩30秒)
プレイス3:元瀧旅館
(大山ケーブル駅そば)
湘南イセハライチの中の人に話を聞いてみた
今回は、伊勢原の名店・とんかつ麻釉の店主であり、湘南イセハライチを主催するNPO法人イセハライクの理事長、阪本純太郎さんにお話を伺いました。My Playful Townでは過去にも阪本さんに取材させていただいています。
過去の取材記事はこちら!
ーまず、湘南イセハライチはどういうきっかけで始まったんですか?
「湘南いせはらplaceが空き店舗になって長らく経って、次の使い手も見つからない時期があったんです。そのままだともったいないし、何か地域の為に使えないかという相談を受けたのがきっかけです。もともと駅前で単発のイベントは開催していましたが、『駅前でも(山の)イセハライチのようなイベントをやってほしい』という要望があったので、定期開催する事になりました。」
ー山のイセハライチや湘南イセハライチには、毎回色んなミュージシャンの方が出演されていますよね。イベントにミュージシャンが集まるようになったきっかけって何ですか?
「やっぱり人の繋がりじゃないかな。1番最初は、音楽要素は無かったんです。その後カフェバーのpoco a pocoさんが出店するようになって、お店がジャズバーなのでマスターに『音楽でもやってよ』って言うお話をして、イベントを盛り上げてもらうためにジャズを演奏してもらったのが始まりです。そこからキッチンカーを出店している人に『碧-Aoi-っていうバンドがあるんだけど、良かったらやらせてくれないか』って紹介を受けて、『機材持ち込みなら全然良いよ』っていうことで碧-Aoi-が毎月出演するようになったんです。そこから『自分も出演したい』っていう人が増えてきて、ステージ組んでやりましょうっていうことになりました。最初はイベントの盛り上げ役のおまけの要素だったのが、ステージにも人が集まるようになって、お客さんも喜んでくれるようになって、それがどんどん進化していって今に至ります。」
ーもともとはおまけの要素だったなんて驚きました!それくらい、音楽は湘南イセハライチにとってのメイン要素の1つになっていましたね。
「そうですね。山のイセハライチは物販を中心に始めたけれども、湘南イセハライチは音楽にフォーカスをしてやってみようかと思いました。」
ー湘南イセハライチは会場の閉館に伴い終了しますが、新たな事業「プレイス123」が始まると伺いました。こちらの事業は、どういうきっかけで立ち上がったんですか?
「湘南イセハライチに携わってくれた人が非常に多くて、その人たちの行き場がなくなるのはもったいないなと思ったんです。山のイセハライチの方はキッチンカーやフリーマーケットなどの出店を展開して、湘南イセハライチはホールの特性を生かして音楽を重視したイベント形式を行ってきました。ありがたいことに、「伊勢原は音楽が活発だ」とか「音楽のまちだ」と他の地域の方たちに言われるようになってきたので、その火を消さないよう、演奏も出来る場所を残していこうという方針で『プレイス123』を企画しました。」
ーミュージシャンが伊勢原に集まって活動できる場を残したいという想いから企画が始まったんですね。
「そうですね。駅前に湘南イセハライチのような催し物を出来る場所があれば良かったんだけど、そこまでの広い場所を急に見つけるのは無理だったので、せめて音楽の部分だけでも残せればなという想いでした。」
ープレイス123では、新たに3つの箇所を会場にするそうですが、会場を選んだ理由はありますか?
「湘南イセハライチと同じような理由です。場所が空いてしまっていて、建物を使わないと老朽化も進んでしまうから、良かったらライブでもやってくれないか?という声をいただいたのがきっかけでした。自発的に何かをやろうというよりも、既にあるものを利用した方が良いと僕は思っているんです。何かチャンスがあれば、それをやっていくだけ。」
ー会場を3つ利用するということですが、大変ではないですか?どうして3つの会場を運営する事を決めたのですか?
「大変です(笑)でも湘南いせはらplaceが無くなると聞いた時に、自分から動いてアサヒショッピングセンターも同じような状況だって言うことにたどり着きました。その後に大山の旅館の話もいただいて、結果的に3つやることになっちゃったんです。」
ープレイス123では具体的にどんなことを行う予定ですか?
「これも地域からの要望なんですが、駅前で人が集まれるところがもう少し欲しいという風に言われていたんです。夜だけじゃなく昼も賑わいが欲しいということで、昼は人が集まれるような飲食スペースを作ろうと思っています。夜は音楽ライブをやったり、参加出来るような場所にしたいと考えています。昔はこのあたりにもライブバーのようなお店がたくさんあったんです。音楽が好きな人が自由に来て自由に演奏できるような。だけど時代とともにそういうお店も無くなってきてしまったから、そういうのを復活できればと思っています。プレイス1(アサヒショッピングセンター1F)は飲食メインで、プレイス2(アサヒショッピングセンター地下)はライブハウス中心。プレイス3(元瀧旅館)は伊勢原の観光拠点となる大山なので、音楽と飲食で観光客が足を止めて休めるような場所に出来たら良いなと思っています。プレイス1はご年配の方でも入りやすいような形で、逆にプレイス2は若者も参加できるようにしたいですね。」
ープレイスごとに想定ターゲットが異なるんですね。ちなみに、湘南イセハライチのターゲットはどの層だと考えていましたか?
「湘南イセハライチも、本来は若者をターゲットにしたかったんです。山のイセハライチはファミリー層中心に年配のお客さんが多いので。」
ーこの事業は、今問題視されている空き家問題の解決に繋がっていると感じています。
「もともとうちのNPO団体(イセハライク)は伊勢原市の商業の発展の為の団体なので。商業の発展の全国的な課題として1番最初に挙げられるのは空き家問題。そこで自分たちが動くことで、何か解決のヒントが見つかったり、後に続いてくれたら良いなと考えています。」
ーこの課題に「音楽」という要素を組み込んでいるのがすごく面白いですよね。
「そうですね、でも音楽も、僕自身が進んで『音楽のまちにしよう!』って動いたわけじゃなくて、もともとそういうチャンスがあるまちだったからそれを生かしているだけなんです。地元出身のミュージシャンがいたりとか、ミュージシャンのことを好きな人たちが多かったりとか。」
ーそうしたチャンスを見極めて実現に持っていくための秘訣は何ですか?
「良くも悪くも、自分が無いからじゃないかな。『自分が何をやりたい』っていうのが無くて、人が喜べば何でも良いやっていうスタンスなんです。イベントを開催した、その先にいる人たちのことを考えているんです。その人たちが喜んでくれるなら良いと思っています。自分でも全部を生かしているわけじゃないけど、例えば山のイセハライチもそうでした。もともと何十年も続いていた伊勢原市主催の朝市が無くなっちゃって、後を継ぐ人がいないっていうので、朝市が無くなった年から山のイセハライチを開催するようになったんです。」
ー自分が何をやりたいかよりも、周りが何を求めているかを考えて行動されているんですね。
「そうですね。信念を持ってやっている人は自分がやりたいことで良いと思うんだけど、自分はそうではないから。結果が良ければ何でも良いと思っています。もともと伊勢原は何にも無いって言われている地域だから、だったら盛り上がるものがあれば何をやっても良いじゃないっていうスタンスで動いているんです。」
ーありがとうございます。プレイス123事業のスタートに期待していることはありますか?
「賑わい創生です。伊勢原市には、根本的に夢が無い、ネガティブなまちという印象を持っているので、伊勢原を『○○があるよ!』って言えるようなまちに少しずつ変えていきたいなと思っています。」
ー今後の伊勢原の若者に期待していることはありますか?
「若者に期待というよりも、僕は、若者が伊勢原に対して『夢が無い』というのは大人たちがいけないと思っています。このままいったら、そのまた下の世代にそれが受け継がれてしまいます。それはどこかで変えないといけない。だからまず大人たちが動ける環境を用意して、若者たちがそれに乗っかってきてくれて、それをこれからの子どもたちの世代に繋いでいければ、20年、30年後には良くなるんじゃないかなと思っています。」
ー「若者に期待したい」と言う大人が多い中で、阪本さんの意見は新鮮に感じます。
「自分たちがやっていないのに何を言っているんだと思います。僕たちが若い時にはそんなこと考えもしなかったし、でも何か面白いことがあれば乗っかっていきたいと思うだろうし、まずは大人が頑張らないと。そもそも、もっと言ってしまえば、僕は人の歳を気にしていないんです。60代でも50代でも、20代の若者でも、同じ『人』ですから。『若者』が何かをしたから凄いとは思わないし、最終的にみんなで一緒に何かを出来たら良いと思っています。だから、『若者が…』という括りは本当は自分の中に持っていないんです。でも、どちらかといえば大人の方が経験があるんだから、先に何か示してあげたら良いんじゃないの、というのが先程のお話です。若者でも、『何かをしたい』という人は多いと思うんです。ただ、その気持ちをどう生かしたいかが分からないだけで。その道を作ってあげれば良いだけだと思っています。」
ーその道のスタート地点を作っている最中ということですね。
「僕がダメでも、その後誰かが継いでどこかで出来ていけば良いんじゃないかと思っています。誰かが最初は始めないといけないんです。もちろん、僕が最初なわけでもないと思います。他にもやっている人はいるだろうし。だから、若者はそんなに考えなくても良いんじゃないかな。『何かをやりたい!』っていう気持ちを持っていてくれるだけで。チャンスがあればそこに乗っかっていけば良いと思うし、楽しければやるじゃないですか。楽しくないことをやる必要はないと思います。」
ーちなみに、プレイス123以外で今後考えていることはありますか?
「考えていることは今は特にありません。常にあまり何も考えていないんです(笑)何かが出てきた時に、じゃあこれを利用できるかなとか、基本的に自分自身が何か全部やりたいわけじゃないんです。『誰もやらないんだったらやるわ!』って感じ。空き店舗事業も、誰もやり手がいないんだったらやるか、っていう感じなんです。」
ーもし他にやりたい方がいたらお譲りする、という形なんですか?
「是非。自分が中心にやりたいとは思っていないんです。」
ーだからこそ、主体性を持った方々が出店者やボランティアとしてイベントに集まってくるんですね。
「そうですね、どちらかというと自分はその手助けをするだけなんです。みんながやりたいことをやって、どうして出来ないのかが自分で解決できないのであれば手助けをする、というスタンスです。」
ー最初は阪本さんが中心に動かれているのかと思っていましたが、ミュージシャンが自らイベントステージのスケジュール表を作成していたり、ボランティアが多く参加していたり、各々で活躍されている方が多い気がします。
「イセハライチはみんなが主役ですからね。みんなで作るイセハライチ。そこを必要以上に僕が動いてしまうと、回らなくなってしまうと思うんです。毎月開催となるとイベントとしては結構な頻度ですから、なるべくみんなの負担を減らして、みんなが同じように活躍できるのが理想です。」
ープレイス123はどういう頻度で開く予定なんですか?
「プレイス1と2は2023年の春頃から常時開けられるようにする予定です。地域の方の拠り所という意味で、毎日開けてほしいという要望を頂いているので、出来る限り開けられるようにしたいと思っています。プレイス3はまだ未定です。まずはピンポイントなイベント開催の時に活用できればと考えています。」
ープレイス123は、イセハライチとは異なり運営母体がNPO法人イセハライクでは無いと伺いました。
「そうです。初期投資が必要になることや、家賃も発生することから、事業として個人名義、あるいは自分の会社で運営を行う方向で検討しています。NPO法人イセハライクと協力しながらやっていく予定です。」
ーありがとうございました!今後のプレイス123の動きを楽しみにしています!
湘南イセハライチの出店者に話を聞いてみた
阪本さんの地域やイベントに対する想いを伺った上で、湘南イセハライチに出店されている方にもお話を伺ってみました!今回お話を伺ったのは、湘南イセハライチに「ぺんぺん食堂」を出店されているぺんぺんさんです。
ー湘南イセハライチに出店するようになったきっかけを教えてください。
「もともとは出演アーティストの碧-Aoi-のファンで、山のイセハライチや湘南イセハライチに遊びに来ていたんです。そこで出ているお店を見て、自分もお店を出したい夢があることを阪本さんにお話したら、『出店する?』と言われたのがきっかけです。」
ー湘南イセハライチの魅力はどんなところでしたか?
「色んな人と出会える場所だったこと。ここで出会えた人がたくさんいたし、人との繋がりがある場所で、みんなの居場所でした。」
ーぺんぺんさんは湘南イセハライチの終了後、プレイス1で飲食スペースを出店されるということですが、それを決断した理由はなんですか?
「この理由も、人との繋がりです。実は、もともと都内に住んでいたのですが、これを機に伊勢原市に引っ越してきたんです。仕事も変わるし不安なこともあるけれど、安心できる場と人がまわりにたくさんいるから、チャレンジする決断をすることが出来ました。これからがますます楽しみです!」
ープレイス1でぺんぺんさんのご飯を頂けるのが楽しみです!ありがとうございました!
今後のプレイス123に期待!
今回は湘南イセハライチ主催の阪本さん、出店者のぺんぺんさんにお話を伺いました!
阪本さんの「イセハライチはみんなが主役」という言葉があったように、出演者も出店者もお客さんも同じ目線で楽しめるのがこうした地域イベントの魅力の1つです。
湘南イセハライチが終了しても、また駅前に新たな「市民の拠り所」が出来るのはとっても楽しみですね!今後のプレイス123事業の動きに是非注目してみてください!
ありがとう、湘南イセハライチ!
そして、これからよろしくね、プレイス123!